プロローグ|見えない脚本

恋愛は偶然だと思っていた。
出会いも、
言葉も、
別れも。
すべて。
そのときまでは。
机の上にはノートがある。
そのノートには、
見覚えのある文章が並んでいた。
雨の日
カフェ
偶然の出会い
私はページをめくる。
次の行。
「彼女は笑う」
その瞬間。
スマホが鳴る。
メッセージ。
「今日は楽しかったね」
私は凍りついた。
その文章は、
ノートに書いてあった通りだった。
その日、私は知った。
恋愛は、
書かれている。
第1章|脚本の断片

私はそのノートを見つけた。
古い喫茶店。
雨の日。
窓際の席。
それは、
私と彼が出会った場所だった。
席の下に落ちていた。
黒いノート。
表紙には何も書かれていない。
ただ中には
恋愛ドラマ #31
そう書かれていた。
ページをめくる。
そこには
恋の進行表が書かれていた。
出会い
会話
距離
好意
そして
キス
私はノートを閉じた。
笑ってしまった。
誰かの冗談だと思った。
しかし。
その夜。
彼から連絡が来た。
「また会いたい」
ノートの次の行。
再会
私はノートを落とした。
第2章|予定された恋

それから数日。
私はノートを開き続けた。
怖かった。
でも。
確認せずにはいられなかった。
ページには
未来が書かれていた。
「彼は花を持ってくる」
次のデート。
彼は花を持ってきた。
「彼はあなたの好きな映画を言う」
彼は言った。
「この映画好きでしょ?」
私は言葉を失った。
それは私が誰にも言っていない映画だった。
ノートは続く。
「彼はあなたを理解する」
その通りだった。
彼は
私の気持ちを
先に言葉にする。
「今日は疲れてるよね」
私は怖くなった。
第3章|観測ログ

ノートの最後のページ。
そこには
奇妙な表があった。
恋愛ドラマ #28
恋愛ドラマ #29
恋愛ドラマ #30
そして
恋愛ドラマ #31
その下。
ログ。
出会い成功
関係進行
感情反応良好
私は息を止めた。
これは
恋愛ではない。
実験だ。
私はノートを閉じた。
そのとき。
背後から声がする。
「見つけましたか」
振り向く。
そこに立っていたのは
見知らぬ男。
黒いコート。
静かな目。
「それは脚本です」
私は聞く。
「誰の?」
男は笑った。
「あなたの恋です」
第4章:脚本家

男は自分をこう名乗った。
「脚本家」
私は笑った。
冗談だと思った。
しかし男は言う。
「恋愛は再現できます」
条件。
出会い。
会話。
タイミング。
心理。
すべて計算できる。
「恋は偶然ではありません」
男は言う。
「脚本です」
私は聞く。
「彼も?」
男は答える。
「役者です」
私は息が止まった。
第5章:主人公

私は彼に会う。
夜のカフェ。
彼はいつも通り笑う。
優しい。
完璧。
理想。
私は聞く。
「これも脚本?」
彼は黙る。
少しだけ。
そして言う。
「君は知る予定じゃなかった」
私は震える。
「あなたは誰?」
彼は答える。
「主人公を支える役」
私は立ち上がる。
「私は何?」
彼は言う。
「主人公です」
その瞬間。
私のスマホが震える。
UNKNOWN
メッセージ。
観測完了
画面に続く。
恋愛ドラマ #31
成功
私は理解した。
私は恋をしていたんじゃない。
恋を演じていた。
エピローグ:次の脚本

数日後。
私はまたあの喫茶店にいる。
窓の外は雨。
カフェの扉が開く。
一人の男性が入ってくる。
見覚えのある光景。
雨の日
カフェ
偶然の出会い
私は笑う。
そしてノートを開く。
新しいページ。
恋愛ドラマ #32
私はペンを持つ。
書く。
「彼は席を探す」
その瞬間。
男は席を探す。
私は書く。
「彼は笑う」
男は笑う。
私は静かに言う。
「ようこそ」
ページの最後。
脚本家
変更
私は理解した。
この物語は終わらない。
恋愛ドラマは
書かれ続ける。
主人公の条件
恋愛ドラマの主人公には、ある共通点がある。
それは
恋を信じていること。
▶第5話:「主人公の条件」を読む
